断るには言葉が必要で、承諾にはいらない
誰かに面と向かって何かを頼まれると、あなたと相手は同じ場に置かれます。承諾すれば場は収まります。頼んだ人は満足し、会話は先へ進み、気まずさも残りません。断ると場が崩れます。言葉を選び、沈黙に耐え、向かいにいる相手の表情が変わるのを見なければなりません。
そのため、「イエス」と「ノー」の代償がやってくるタイミングは異なります。「ノー」の代償はその場ですぐに払います。「イエス」の代償を払うのは土曜日。自分の用事の代わりに、誰かの引っ越しを手伝いに行くときです。比べているのは2つの負担ではなく、1つは目の前にあり、もう1つは遠い先にある負担で、目の前のほうがいつも重く感じられます。
携帯電話を貸してほしいと頼む実験では、通行人のおよそ2人に1人が承諾しました。頼んだ側の予想を上回る割合です
これは、参加者が見知らぬ人に携帯電話を貸してほしい、アンケートに答えてほしい、目的地まで案内してほしいと頼んだ一連の実験で確認されています。ほぼ毎回、参加者は実際に受けた数よりもかなり多くの断りを予想していました。あなたの側から見ると、状況は違って見えます。頼んだ人は、あなたが承諾するためにどれほどの負担を感じたのか知りません。
効いているのは説得ではなく、気まずさ
対面での頼みごとが強いのは、説得力のある argumentsがあるからではなく、誰かに見られている前で断らなければならないからです。同じ頼みごとでも、文章で伝えると成功する割合はかなり下がります。文章のほうが下手だからではありません。メッセージなら断る負担はほとんどなく、すぐに返事をしなくてもよく、落ち着いて言葉を選べて、相手の顔も見なくてすむからです。
最初に小さな頼みごとをする方法も、これと似た仕組みです。小さなことを承諾すると、あなたはすでに「人を助ける人」だと自分を示したことになります。その直後に大きな「ノー」を言うと、頼んだ相手だけでなく、そのイメージとも食い違ってしまいます。ただし、この効果は小さく、いつも働くわけではありません。
期待と現実のずれ自体は、さまざまな実験で繰り返し確認されています。ただし、その大きさは大きく変動します。効果の強さは、誰が何を頼むかによって異なります。親しい間柄と職場の上下関係の中では現れ方が違い、正確な大きさを示せる人はいません。一貫しているのは方向性です。対面では断りにくく、頼んだ側はそのことに気づきません。
断りやすくするもの
助けになるのは、意志の強さではなく、時間のプレッシャーを取り除くことです。今すぐ答えなければならないように思えることのほとんどは、夕方まで待ってもらえます。夕方になれば、「ノー」の目の前の負担は、「イエス」の遠い先の負担に対する優位を失っています。
- 間を置く。「夕方に返事します」も、すでに答えです
- 自分が楽な方法で返事をする。廊下でではなく、メッセージで伝える
- 理由は1度だけ、簡潔に伝える
- 詳しく説明する。長い説明は、交渉への誘いに聞こえます
- 「ノー」のつもりなら、「たぶん」でその場を和らげない
- 相手がどれほど落ち込むかを、先回りして決めつける
なぜ対面で「ノー」と言うほうが、承諾するより難しいことがあるのでしょう?
その場のプレッシャーで承諾しないために、何が役立つでしょう?
出典
- Flynn and Lake(現在はBohns), Journal of Personality and Social Psychology, 2008 - 承諾の過小評価。対面での依頼とメッセージでの依頼の比較 - Roghanizad and Bohns, Journal of Experimental Social Psychology, 2017。「フット・イン・ザ・ドア」 - Freedman and Fraser, 1966。
「人の操り方」シリーズの続き
サイトで全文公開3本、アプリにさらに4本
