争点が出来事からあなたへ移る
この名前は1938年の戯曲に由来する。毎晩、家の明かりが暗くなるのに、妻が尋ねると夫は「何も変わっていない。気のせいだ」と言い張る。夫が争っているのはランプのことではなく、妻の視覚のことだ。戯曲の終わりには、彼女は自分に見えているものを声に出して言うことさえためらうようになる。
現実でも同じように起こる。あなたが「電話するって約束したよね」と言う。返ってくるのは「いや、約束していない」ではなく、「いつも何でもでっち上げる」だ。違いは大きい。前者はその晩の出来事についてで、確かめられる。後者はあなた全体についてで、確かめようがない。
7時に迎えに来るって言ったよね。
そんなこと言ってない。気のせいだよ。
メッセージが残ってるよ。
いつも何でもねじ曲げる。また始まった。
ただ聞いただけだよ。
ほら、それだよ。話にならない。
会話がどこで終わったか、見てみて。7時の話で始まったのに、最後はあなたがどんな人かという話になっている。もう7時のことを覚えている人はいない。これがこの手口の仕組みだ。言い負かすのではなく、争点をすり替える。確かめられる出来事を、確かめようのないあなたに置き換える。
なぜ記憶は揺らぐのか
記憶はアーカイブではなく、再構成されるものだ。その晩のことを思い出すたびに、あなたは断片と、その後に聞いた話をもとに、記憶をもう一度組み立てている。心理学者のエリザベス・ロフタスは実験で、出来事の後に誤った情報を与えると、その一部を後になって本当の記憶として思い出す人がいることを示した。
だから、誰が言っているかが重要になる。他人の言うことなら信じないだろう。身近な人なら信じてしまう。その人はそばにいて、覚えておく理由もあなたと同じくらいあったからだ。その人が「そんなことはなかった」と何度も自信ありげに言うと、あなたの記憶はよりどころではなくなっていく。あなたは自分ではなく、その人を基準に現実を確かめ始める。
ガスライティングとは、嘘をつかれること、あるいは同じ晩のことをただ違って覚えていること。
2人が正直に、同じ出来事を違って覚えることはいつでもある。ガスライティングは、問題はその出来事ではなくあなたの頭にある、と繰り返し説明されるところから始まる。
正直に言うと、ガスライティングは診断名でも測定できる量でもなく、行動パターンを指す名前だ。その土台にある、記憶が変わりやすい仕組みはよく研究されている。一方で、このラベル自体は曖昧で、ほとんどどんな不快な口論にも使われている。言葉ではなく、その特徴を見て。出来事についての会話が、あなたの判断力は正常かどうかという話に繰り返し変わるかどうかだ。
- 出来事の話に戻す。「7時のことを話そう」
- 自分が普通かどうかを争わない。そこに勝てる答えはない
- 自分で読み返せる場所に約束を書き留める
- 同じ場にいた第三者に、その出来事について聞く
- 会話の後に残るものを見る。答えか、それとも自分への疑いか
ガスライティングでは、出来事の話が何にすり替えられる?
自分の記憶をよりどころにするには、何が役立つ?
出典
- 記憶が変わりやすい仕組み:Loftus & Palmer, 1974;Loftus, Miller & Burns, 1978 - 誤情報効果に関する研究。名称はパトリック・ハミルトンの1938年の戯曲「ガス灯」に由来する。
「人の操り方」シリーズの続き
サイトで全文公開3本、アプリにさらに4本
