試されているのは頭のよさではなく、状態
他人の話なら、怪しい点にすぐ気づけます。知らない番号、緊急性、誰にも言わないでという頼み。けれど、それは正しくても役に立たない見方です。あなたは外側から、落ち着いて、しかも結末を知った状態で見ているからです。話の中にいる人には、まったく違って見えました。仕事中、通話が始まって4分後、「今まさに口座が不正アクセスを受けている」と言われたときです。
詐欺師はあなたの頭のよさと争うのではなく、頭が働く条件を変えます。時間がない。不安や焦りが大きい。相談できる人が近くにいない。どんな確認にも間が必要ですが、その筋書きには間を置く余地がありません。
あなたが同意してしまう会話の組み立て
きっかけはいつも正当そうに見えます。銀行からの電話、上司からのメール、親しい知人からのお得な話。そこに期限が加わります。数分後には窓口が閉じる。そして、問題が解決するまで誰にも相談しないでほしいと言われます。
- きっかけ
- 期限
- 沈黙
- 同意
1つひとつなら普通に見えるのに、危険なのはその順番です。頼みごとが本当におかしいと感じる頃には、あなたはもう30分も協力する人のように振る舞っています。ここで断ると、それまでの30分、自分が間違っていたと認めることになる。だから、多くの人はもう一度同意するほうが楽だと感じます。
筋書きがすることの核心は、時間を縮めることです。大事な決断には、ふつう何日もかけます。調べ、比べ、相談する。ところがここでは、あなたに与えられるのは数分です。偶然ではありません。数分では、何も確認しきれないからです。
頭のよさが、ときに邪魔をする理由
ケンブリッジ大学のセキュリティ専門家フランク・スタヤーノと、テレビ番組のために何年も街頭詐欺を再現してきたポール・ウィルソンは、数十種類の手口を分析しました。繰り返し登場した仕掛けは、注意をそらすこと、権威による圧力、「みんなもう同意している」、時間不足です。どれも頭のよさとは関係ありません。
頭のよさは2つのものを加えますが、どちらもあなたには不利です。1つ目は自信。「私ならだまされない」という思いが、確認するという手順をなくします。確認するのが屈辱的に感じられるからです。2つ目は、説明する力。頭の回転が速いほど、すべてのつじつまが合う筋書きを早く見つけます。イギリスの詐欺心理学に関するレビューでは、被害に遭った人は、断った人たちに劣らずその分野を理解していることが多かった。ただ、相手が作った枠組みの中で、その話をより深く考えていたのです。
- 権威頼む権利があるように聞こえる声。銀行、上司、セキュリティ担当者などです。そんな相手に反論するのは気まずく感じます。
- 期限数分後には窓口が閉じる。焦らせることで、詐欺の邪魔をする唯一のもの、確認ができなくなります。
- みんなも「近所の人も同意した」「部署ではもうみんなやった」。他人の同意を、あなた自身の判断の代わりに差し出します。
- 沈黙解決するまで誰にも話さないでほしいという頼みです。外側から手口を見抜く人とのつながりを断ちます。
緊急の電話で、なぜ混乱してしまうの?
急かされ、誰にも言わないでと言われたら?
出典
- F. Stajano、P. Wilson「詐欺被害者を理解する:システムセキュリティのための7つの原則」ACMコミュニケーションズ、2011年;公正取引局「詐欺の心理学」報告書、2009年。
「詐欺」シリーズの続き
サイトで全文公開2本、アプリにさらに2本
